フレックスは1967年の創業以来、着実に成長を続け、近年においては、さらなる伸び方を実現しています。
そのことを喜ぶ一方で私は、会社を大きくすること自体は目的ではないと、よく考えます。
私がまだ経営者として経験も浅いころ、目覚ましい成長を遂げたある企業の先輩経営者に尋ねたことがあります。
会社って大きくしなければならないんですか?
若造がわけのわからないことを言いやがってと、一笑に付された記憶があります。
そりゃそうです。
でも私は本当に不思議でなりませんでした。
どうして誰も彼も会社を大きくすることを至上命題のように考えているのだろう。
当たり前のことだからでしょうが、その当たり前が当たり前である理由について、語る人がいないそのことが不思議でした。
浅はかかもしれないけれども、その素朴な疑問は、まだ若かった自分だからこそ抱けたヒントなのかもしれないと、今まさに思います。
私がいつも経営を考えるうえで前提としているのは、社員のしあわせです。
会社が大きくなることを喜ばない社員はいないと思います。けれども、企業規模の拡大を第一義にかかげることによって、そこで働いている人たちのなにか大切なものが蔑(ないがし)ろにされるのであれば、拡大には意味がない、と思うのです。
この考え方の順序を大切にしたい。
社員やお客様のしあわせを最大化するために、企業規模をスケールアップする必要性があれば、そのことに意味はあります。
でも、あの会社の方がうちより大きいから、うちももっと大きくなりたいなどといった背比べの自己満足では意味がありません。
市場の競争原理の中で、経営的に自分たちの足元を盤石なものにするには、先んじて攻めて行く必要があるのは、言わずもがなです。ただし、そうやってアクションを起こすための動機と目的とを、掛け違いたくはないのです。
企業にとってのゴールとはどこにあるのでしょうか?
市場でナンバーワンになり、新規事業も矢継ぎ早に展開し、あらゆる市場を飲み込んで、宇宙一の大きな企業を目指すべきなのでしょうか?
でも、少なくとも、私自身は宇宙一大きな会社をつくっても、しあわせにはなれない。
きわめて個人的な、ちっぽけな感覚かもしれませんが、経営者としてその観点を捨てず、そして、自分自身の人生における喜びがなんなのか、明確に定義づける必要があると、つねづね考えています。
そのことがひいては、一緒に働く人たち、私たちが価値を提供するお客様たちのしあわせの質にかかわってくると思うからです。
私は、宇宙一大きな会社ではなく、宇宙一しあわせな会社をつくりたい。
平凡な日常であれ、私は家族や仲間と過ごす時間にこそ、しあわせを見出しています。
だからこそ、平凡で、小さな出来事にこそ、しあわせを感じられる会社をつくりたい。
そして、そのことを共有できる仲間たちとつくる会社であれば、自然とお客様をしあわせにすることができるはずだと思うのです。
その結果として、わたしたちフレックスは成長を続けて来られたのだと、私は考えています。